サイトアイコン IoTナビ

日本の産業IoTの課題って?ものづくり白書2018年版から探る

どこもかしこもIoT活用が叫ばれる日本の製造業。インダストリー4.0の発生源であるドイツ、IT技術で世界をリードするアメリカ、中国製造2025を旗印に急成長を遂げる中国など、各国に比べて遅れている/進んでいるといった議論が盛んに行われているが、実際の日本企業のIoT、データ利活用の状況はどうなっているのか?日本の製造業の今を「2018年版ものづくり白書」から探る

デジタル化による現場力の維持・向上が必要

2018年版ものづくり白書では、日本の製造業が解決しなければいけない課題として「現場力の維持・向上」と、「付加価値の創出」の2点を挙げている。

昔から日本の製造業は現場力が強いと言われ、この変革の時代でもその強みを残しつつ、時代に合わせて変わっていかなければいけない。強い現場力とは何かを尋ねたところ、ニーズ対応力、品質管理、短納期生産、試作・小ロットと回答した企業が多く、「顧客の要望に応じて高品質の製品を短納期で作ること」。これらが日本の強みだとしている。(図114-16)

ものづくり白書2018より

一方、弱みに関しては、ロボットやIT、IoTの導入・活用力、先端技術の導入・活用力という回答が多く、日本の製造業は長い間、優れた熟練技術者のカン・コツ・ドキョウによって支えられてきて、新技術の導入や変化に弱いということが分かった。つまり日本の製造業の未来のためには、熟練技術者が持つ高い現場の技術力と対応力を後進に教え込むことが重要となるが、そもそも人手不足で継承させる人材がいない、技術継承のハードルを下げるためにも必要なデジタル人材もそれ自身が不足しているという問題に直面している。(図114-17)

特にデジタル人材の不足は深刻で、経産省が2017年末に実施したアンケートによると、デジタル人材が必要であるとの回答が6割で、そうした人材が質量ともに不足していると回答したのが全体の3/4に達し、大企業・中小企業問わず不足感が強い。また情報処理推進機構(IPA)の調査によると、IT企業でもIT人材の不足感が顕著であるとされ、日本全体でデジタル人材が枯渇している。

データ活用は経営層がリードする段階へ

「付加価値の創出」についてものづくり白書では、ハードウェアの普遍化が進み、付加価値の源泉がデータ資源を活用するソリューションへと変わり、大転換期を迎えていると指摘。データの重要性に気づき、サービス化やソリューション化などビジネスモデルの変革に利用できるかどうかが今後の企業戦略の鍵を握るとし、その実効性を上げるためにも経営層や経営戦略部門によるトップダウンでスピーディーに強力に推進していく必要があるとしている。実際にその意識は変化しており、データ活用戦略を主導する部門について、昨年は現場の製造部門が45%と最も多かったのが、今年は経営層が55%と最多を占めた。(図115-10)この変化に対し、実際に何か変わったかというとまだその効果は見えてこない。データを収集しているかどうかの調査では、イエスが昨年の67%だったのに対し、今年は68%とほぼ横ばい。見える化や生産プロセスの改善など具体的な活用についても昨年とほぼ変わっていない。
(図115-12)(図115-13)

ものづくり白書2018より

目的を定め、現場と共有し、全社で動くことが大事

IoT、データ活用を次のステップに進めるためには、経営層の判断・決断が重要になる。白書では経営層がまずやるべきことについて「データの活用目的を明確に定める」とし、活用目的が決まっていないとどのデータを集めるのかが決まらずに前に進まないとしている。
次にはその目的を現場と共有すること。共通認識を醸成させて、データ活用を推進していくことが大事としている。
次のステップが「データの質の高さを担保すること」。データサイエンティストのような人材が現場から上がってくるデータを見て取捨選択し、有効なデータにする工程が必要となる。こうして得たデータをデータサイエンティストが分析し、経営層、現場を巻き込んで目的実現のための方策を取ることが大事となる。

兎にも角にもデジタル人材の育成・確保が絶対条件

データを収集している企業でも、その利活用に至らない最大の理由が「知見のある人材の不在」。付加価値創出においてもデータ活用やデジタル技術等の専門知識を持ったデジタル人材が社内にいないことがネックとなっている。先に挙げた現場力の維持・向上に関しても、優れた技術をデジタル化で継承し、標準作業化するためにもデジタル人材は不可欠。図らずも異なる課題の答えは同一となり、デジタル人材の育成・確保となった。

デジタル人材の需要は製造業に限らず全産業に広がる。デジタル人材を製造業に多く迎え、流出させない仕組みづくりが急務となっている。

参考:経済産業省「ものづくり白書」

モバイルバージョンを終了