2017年度のFA・制御機器業界は好調のうちに幕を閉じた。
18年度は国内の労働力不足対策とIoTへのニーズの高まり、海外、特に中国やアジア地域で高まる自動化需要など好条件に恵まれているが、一方で円高による為替リスクも危惧されている。
FA・制御機器業界の17年度振り返りと、18年度を予測する。
FA・制御機器業界全体の17年度実績
日本電機工業会(JEMA)が発表した17年度の産業用汎用電気機器の出荷実績によると、17年度の出荷額合計は、前年比12.3%の9224億円で2年連続の増加。中国を中心としたアジアの設備投資が活況であり、輸出、国内出荷ともに好調な動き。特に半導体とFPD製造装置向けが好調だった。
回転・駆動機器の出荷額合計は21.8%増の3690億円。三相誘導電動機(75㌔㍗以下)では、2年連続の増加。サーボモータ(アンプを含む)は、1年を通じて半導体・FPD製造装置向けが好調だった。
配電・制御機器の出荷額合計は6.6%増の3943億円で、3年ぶりの増加。標準変圧器(2000kVA以下)では、電力向け、電力以外の製造業・非製造業向けの減少が続き、3年連続の減少。プログラマブルコントローラは、足元では一服感が見られるが、半導体とFPD製造装置向けの好調が持続し、5年連続で増加となった。
▲産業用汎用電気機器の出荷実績
日本電気制御機器工業会(NECA)の電気制御機器の2017年度出荷統計によると、出荷総額は7386億円で初の7000億円超え。これまでの最高出荷額だった14年度を上回る結果となった。前年比は751億円増(11.3%増)で2年連続のプラス。輸出比率は42.7%となり、3年連続で40%を超えた。
品目別では、自主統計の5大品目(制御用リレー、操作用スイッチ、検出用スイッチ、制御用専用機器、PLC/FA)の全てが前年比プラス。制御用専用機器を除く4大品目では過去最高額となり、特にPLC/FAは初の1000億円超えとなった。
国内出荷額は4231億円で3年ぶりに4000億円を超えた。前年比は333億円増(8.6%増)となり、2年連続プラス。世界的に広がる景気拡大の中、企業業績の改善、設備投資の増加を背景とする順調な伸びとなった。
輸出出荷額は3155億円で初めての3000億円超えとなり、前年比418億円増(15.2%増)、4年連続で過去最高額を更新。世界的な景気拡大、設備投資増加などにより好調に推移した。
IoTを活用した製造現場の高度化をはじめ、生産性向上と労働力不足解消に向けた自動化の拡大に対する需要が国内外で盛り上がっており、その需要を確実に刈り取れていることが分かる。
▲NECA 出荷総額の推移
17年度の主要各社のFA・制御機器事業概況
JEMA、NECAの実績で示すように、大手各社のFA・制御機器事業も非常に好調。国内堅調、海外でも特に中国市場の拡販により、多くが売上高で前年同期比10%増を達成した。
三菱電機の産業メカトロニクス部門は、売上高1兆4449億円、営業利益1908億円の増収増益。韓国等での有機EL、中国のスマートフォンや電気自動車関連の設備投資増加等を追い風に好調だった。
安川電機は売上高4656億円、営業利益571億円の増収増益。ACサーボとインバータ、ロボットが好調で、中国生産と販売の拡大が大きく寄与した。
横河電機は売上高4006億円、営業利益327億円。制御事業はエネルギー関連以外が堅調で、海外市場も円安と運用・保守が底堅く推移した。
オムロンの産業用制御機器(IAB)は売上高3961億円と前年に比べて約20%の増収。営業利益は740億円となった。自動車とデジタル、食品・日用品、社会インフラのグローバル注力4業界の好調が大幅に押し上げた。
富士電機のパワエレシステム・インダストリーソリューションは、売上高3159億円、営業利益183億円の増収増益。国内と中国でインバータとFAコンポーネントが堅調に推移した。
パナソニック(オートモーティブ&インダストリアルシステムズ)は、売上高2兆8035億円、営業利益は914億円。車載・産業向けが大きく伸張した。
日立製作所(インダストリアルプロダクツBU)は、売上高3693億円で7%の増加だった。
アズビル(アドバンスオートメーション)は、売上高972億円(1.8%増)、営業利益は99億円。国内が堅調に推移し、海外も半導体製造装置向けのコントローラ、センサ関連が好調だった。
IDECは、売上高598億円(37.7%増)、営業利益は61億円(72.3%増)と絶好調。過去最高の売上高と利益を更新した。主力の操作用スイッチ等のコンポーネント機器や安全関連機器、PLCが堅調に推移。さらに買収したAPEMの売り上げ、新たにグループ化したウェルキャット等が業績に寄与した。
18年度各社予測追い風受けて好調傾向
17年度の為替状況は、1ドル110円から111円、1ユーロ133円ほどだったが、各社は18年度について1ドル100円から105円、1ユーロ125円から130円と想定。昨年よりも円高が進み、輸出環境としては厳しくなる見込みだが、自動化需要の追い風と売る力の強化により、増収増益または増益を見込む。
三菱電機の産業メカトロニクス部門は、売上高1兆4500億円と横ばい、営業利益は1840億円で2%減を見込む。しかし1ドル100円と為替影響を厳しく見ていることから、前年度の為替条件では売り上げで3%、営業利益で6%の増加としている。
安川電機は、過去最高となる売上高5100億円(9・8%増)、営業利益は655億円で14.7%増と大幅増を見込む。ロボティクス領域の攻略、成長市場の売上拡大、人協働ロボットの拡販など、グローバルの自動化・省力化需要の取り込みを図る。あわせてグローバル生産力を拡充し、日本で次世代工場を立ち上げるほか、中国とヨーロッパで工場の拡張・新設する。
オムロンのIABは、売上高4280億円で8.0%増、営業利益は820億円と予測。17年度に引き続いてグローバル4業界に対して、センサからコントロール、ロボット、安全まで幅広い製品ラインナップを強みとしたトータルソリューション力の強化で達成を目指す。コードリーダと組み合わせたトレーサビリティ領域の強化やロボット活用の提案を進める。またユーザーの経営・現場課題を解決するオートメーションセンターを世界で18拠点開設する予定。
横河電機は、売上高4050億円と0.4%減としながら、営業利益は微増の330億円。円高で為替の影響を受けて減収予想だが、営業利益は増益となる見込み。
富士電機のパワエレシステム・インダストリーソリューションは、売上高3220億円、営業利益192億円で微増と予想。国内・中国の自動化ニーズに対するFAシステム事業の拡大と、プロセスオートメーション分野で海外エンジニアリングとプラントシステムの受注拡大を目指す。また海外鉄道事業の拡大に向けた新製品開発を加速するとしている。
日立製作所(インダストリアルプロダクツBU)は、7%増の売上高3950億円と予想。
パナソニック(オートモーティブ&インダストリアルシステムズ)は売上高3兆円で7%増、営業利益1360億円。車載電池事業が牽引役となり大幅な増収増益を見込む。インダストリアルではEVリレーやモータなど車載・産業比率を高め、増販を図る。
アズビルは、売上高1000億円(2.8%増)、営業利益は110億円と予測。新商品の投入と、国内外の半導体製造装置やその他の市場で拡販を進める。生産拠点の強化を進め、湘南工場をマザー工場として周辺2工場を19年に集約。藤沢テクノセンターを21年までに整備し、最先端の要素技術と生産技術の挑戦を進める。
IDECは売上高625億円(4.5%増)、営業利益は72億円(17.8%増)を見込む。HMIソリューションの6.3%増、盤内機器ソリューションで1.6%増、オートメーションソリューションで7.5%増、安全・防爆ソリューションで6.9%増と各製品領域で17年度を上回る見通し。