国内のデータ産業の事業環境調査 DC老朽化対策、海外クラウド隆盛、エッジ活用など

データの利活用がこれからの製造業のビジネス拡大の成否を握るなか、それを支えるデータ関連の業界はどうなっているのか?

経済産業省は、データセンター、クラウドインフラを中心とした市場動向を調査し、あわせてデータ流通や保護に関するルール、国内外の最新動向を調査しまとめた。

データセンター産業は高速化・省エネ化対策が必要

データ社会を支える最重要インフラとなるデータセンター。その産業の国内市場の現状について、IoTなどのデータ活用の需要が活況なため、データセンターの重要性は高まっている。国内企業の競争も高く、2016年度の国内のデータセンター市場における国内企業のシェアは98%となっている。

しかしながら一方で、AIに関わるデータ処理など大量・高速処理の需要が拡大するなか、電力コストの低い海外の方がデータセンターの立地に関して優位性が高いとの見方もある。

さらに、国内のデータセンターは老朽化が進んでいて、建設後20年を経過したものの割合が40%強もある。高速化、低消費電力化が求められるなかで、こうした状況は看過できず、設備投資が必要と指摘している。

▲国内のデータセンターの老朽化状況

海外のクラウドサービスの勢いが増す。
使いこなす人材育成を

パブリッククラウド市場については、2016年のシェアは49%が海外製品・サービスが占め、2030年には62%まで高まると推計。

海外勢の機能・サービス面での競争力が高く、それらの研究開発に充てる費用も国内勢が売上高の5%未満なのに対し、海外勢は10%以上を充てている。そのためサービス・機能面での競争力の差は広がるばかりとしている。

今後については、高機能かつ安全性の高いクラウドサービスの利活用を進めるための施策が必要とし、それを使いこなす高度な人材の育成と、セキュリティに注意し、基準等を明確化することが大事としている。

▲パブリッククラウドの市場シェアの推移

自由なデータ流通が付加価値を生む。
一方で機密情報の管理厳格化も

データ流通や保護に関しては、大前提として、自由なデータ流通が新たな付加価値を作るとの認識を明らかにし、その上で機密性や可溶性が求められるデータの管理体制について検討することが大切であるとした。

クラウドとエッジの使い分けへの対応が必須

現在のデータ利活用基盤はクラウド中心の構造となっているが、今後IoTが進んでデータ対象がリアル空間に拡大すると、自動走行や自律制御等でデータ処理のリアルタイム性が不可欠になってくる。製造業ではエッジ重視の傾向はすでに始まっており、クラウドとエッジの使い分けの議論が盛んになっている。

こうした変化に対応するため、データセンターやクラウドインフラに係る取組を短期的な対応策として確実に進めつつ、アーキテクチャの変化を踏まえた取組の方向性、エッジに対応したプラットフォームの構築などを考える必要性があるとしている。

具体的には、エッジでの分散処理とクラウドでの集中管理・処理を協調して活用できる自律分散協調型の仕組みや、異なるエッジやクラウドの仕組みとも協調・連携できるよう標準化の推進、エッジの高速処理や省エネ要求に対するハードウェアの開発なども必要であるとしている。

▲アーキテクチャの変化(集中と分散の波)

出典:経済産業省「データセンターやクラウドインフラ等、我が国のデータ産業を巡る事業環境等に関する調査結果を取りまとめました」