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運用サポートまで付いている!NTT東日本の工場向けIoTパッケージが素晴らしい

何事も始めるのは簡単ですが、続けるのが難しい

IoTでも、導入が簡単、安くスタートできるといったサービスをたくさん見かけます。しかしその多くは「始めるためのハードルの低さ」に焦点を当てたものばかり。実際に運用をはじめてみたら色々な問題が出てくるのは目に見えており、実はそのあたりのサポートがしっかりしているというのは、導入する側にとっては心強く、安心感があります。

それを充実させたサービスとして、今回、NTT東日本が工場向けIoTサービスを始めました。
その名も

工場向けIoTパッケージ

(そのまんまでした)

このサービスは、センサからネットワーク、クラウドまでIoTに必要なすべてがセットになったパッケージで、それに加えて導入から運用までのITサポートも含まれています。オールインワンのIoTパッケージは似たようなものがたくさん出ていますが、365日サポートが付いているというのはなかなか見かけません。これはさすがに通信でコールセンターやサポートセンターで豊富なノウハウを持ち、その人員や設備もあるNTT東日本ならではですね。素晴らしいです。

やっぱり導入が進んでいない地域の工場のIoT。運用後のサポートに不安感

なぜNTT東日本が運用サポートに焦点を当てたかというと、こんな調査結果が出たからだそうです。これは私も意外でした。

彼らの調査によると、製造業の国内工場は37万カ所あり、そのうち36万カ所が中小工場。このほとんどでIoTが進んでおらず、取り組みを開始している企業はわずか8%しかいないそうです。検討している(14%)、情報収集をしている(34%)は多いのですが、一歩踏み出せていないのが実態のようです。

じゃあなぜ踏み出せないのかというと、サービス・機能内容や価格など導入しやすさへの懸念もあるのですが、実は意見として多かったのが、「運用のしやすさ」と「導入後の保守サポートへの不安」。導入してみたはいいけれど使いこなせない、何か問題が起きた時に対処できないという不安があり、そこがハードルになっているんじゃないかと考えたそうです。

確かに、IT人材は日本中で不足していると言われていますし、中小企業は通常の採用ですら苦労しているのに、IT人材となったら余計に採用が難しくなります。そんな状態のなか、使いこなせるか分からないツールを入れるというのはバクチそのもの。それは二の足を踏むのも納得です。

オールインワンパッケージ&IT担当者いらずの手厚い運用サポート

サービスの中身はと言うと、センサとネットワークカメラなどIoTデバイスと、そのデータを伝送するためのWiFiのIoTゲートウェイ、データとネットワークを保護するセキュリティ、データを蓄積して見える化するIoTクラウドに加え、利用後の運用サポートもワンセットで提供してくれます。

さらに運用サポートもついてきて、365日(9時−21時)無休で対応し、IoTデバイスの初期設定から利用方法の問い合わせ、設定変更、機器やネットワークのトラブル時の故障診断や駆けつけ保守等に加え、クラウドからCSVデータを抽出してビジュアル化したレポート提供も行ってくれるそうです。

通常は自社のIT担当者が行うような業務をNTT東日本が代行してサポートしてくれるので、中小企業でIT担当者がいない、雇用できないという場合でも安心して使うことができると言います。

できることは機械の稼働監視と異常通知

とは言え、過度の期待は禁物です。このパッケージでできることは、あくまで稼働状況のリアルタイム可視化と異常時の通知のシステムです。

機械に外付けでセンサを取り付け、稼働・停止データをクラウドに送信。クラウドでそれを蓄積しながらモニタに表示し、異常時にはパソコンと携帯電話へ異常を知らせるメールが届きます。同時にネットワークカメラで機械の状況を常時撮影しており、停止などイベント発生の前後5分程度をデータとして保存することができます。端的に言えばこれだけ。

最近よく聞く予知保全のような機能はありません。また品質向上に向けた工具のモニタリングといったような高度な機能は付いていません。NC装置やPLC、機械の内部をいじるようなところまでは行きません。またERPやMESなど上位のITシステムとの連携や、振動や電流、音、熱などの多くのセンサからデータを取ってきて多角的に機械の状態をモニタリングするといったものもありません。あくまでIoTのファーストステップの見える化です。

でも機械の稼動が見える、異常通知が届くだけでも十分な成果が上げられます。
それが次。

導入効果:トーメックス、1年で稼働率4%、年間120万円の利益効果

実際に1年前からサービスの実証実験に協力した板金加工のトーメックス(埼玉県川口市)では、打ち抜き工程の自動加工機械1台に機器を設置して稼働状況を見える化したところ、稼働率が4%改善し、年間120万円の利益効果が出たと言います。

これまで機械が停止した際は、機械の様子や信号灯の赤ランプを見てはじめて気づく形でしたが、携帯電話やパソコンにメールが届くことで発見から現場に行くまでのタイムロスが大きく減少。復旧作業についても、従来はイチから原因を探していたのが、カメラでトラブル時の状況が確認できるので、どこで何が起きたかがすぐ分かり、原因究明と復旧作業の時間と手間が大きく短縮できたそうです。これまでは復旧までに1時間以上かかっていたのが30分程度で済むようになり、機械の稼働時間が劇的に伸びたそうです。

また、これまでは機械が動いているかを定期的に巡回目視していたのを、サービス導入後は必要なくなり、その分別の仕事ができるようになりました(時間の有効利用)。

さらに、皆でワイガヤしながら停止画像から異常の原因究明をすることで、ベテラン技術者の見ているポイントや知識を若い人に伝えることになり、知識とノウハウ継承にもつながったと言いいます。

トーメックス 常務執行役員 浅子英一氏は「こまめに加工機の状態を見に行く手間と、止まった時になぜだろう?と考える時間が減り、復旧や段取り替えが効率的にできるようになり、現場でも好評だ」と話してくれました。

信号灯シェア70%のパトライトと協業

個人的にもう一つ良いところに目をつけたなーと思ったのが「センサ」です。標準的なパッケージでは稼動データを取るのに積層信号灯とネットワークカメラを使うことになっているのですが、積層信号灯へのセンサはパトライトのIoTデバイス「AirGRID」を採用したことはすごく大きな効果があります。

 AirGRIDは積層信号灯に後付けで取り付けられる、センサと通信機能を搭載したIoTデバイスです。信号灯は工作機械でも食品機械でも化学機械でも、機械と言われるものであればほぼ全てに必ずついているもので、パトライトはその信号灯の国内シェア70%という圧倒的なシェアを持っています。

IoT導入の妨げになるポイントのひとつに、工場内にある機械はメーカーも種類もバラバラで、すべてをつなげるのは非現実的であるという点があります。メーカーや機械の種類が違えばハードウェアとソフトウェアの作り方が違い、違う者同士をつなげるのはとても難しく、つなげるために内部をいじると莫大なお金と手間がかかります。1社の機械だけで統一している工場はほぼ皆無で、つなげるのが難しい、つながらないというのが現場の認識だったりします。

※ちなみにトーメックスでテストに使った打ち抜き機械は村田機械製。工場内にはアマダなど他のメーカーの機械もたくさんありました

しかしパトライトとAirGRIDの場合、どの機械にもある信号灯に取り付けるだけ、しかも信号灯の70%はパトライト製という環境がすでに構築されています。複数のメーカーの機械を使っていても、その違いを吸収して統合して稼働監視ができるというメリットがあります。

※ただし一方で、あくまで信号灯でデータを収集するので、機械のより深いところのデータまでは取れないという制限があると思います。

極端に言えば、AirGRIDは業界や業種を問わず国内にあるほぼすべての機械を簡単に稼働監視できる機能を持ち(言い過ぎかな)、しかも簡単に簡易的にIoTを始められる。中小企業でも信号灯は馴染みのある機械であり、パトライトはほぼすべての人が知っているブランド・製品で、機械の内部をいじらずにIoTを始められるというのは、IoTに対する心理的なハードルを下げる効果があります。

そこにNTT東日本の全国に広がる販売網とサポート体制が加わるというのは、中小企業のIoT化にはとても心強いのではないかと個人的には思います。

約130万円強は高いか否か?将来に向けた重要な投資と考えよう

導入にかかるコストについて、1台の機械でセンサ一式とネットワークカメラ1台で監視するシステムのモデル価格は、初期費用で132万円、月々の利用料金で2万9900円です。

130万円超プラス月額費用は、中小企業にとって決して小さい投資ではありませんが、イチから必要な装置やシステム、ネットワークを揃えて構築するコストや運用後の保守サポートまで入っていることや、何よりトーメックスで1年で120万円の効果が出て、うまくやれば1年超で投資回収できることを考えると、無理な金額ではないのかなーとも感じます。

また作業員が時間を効率的に使えるようになり、同じ人数でもっと多くの作業ができるようになることを考えると、費用対効果もそうですが、人不足対策にもつながります。トーメックスでもこの効果を見て、作業員は1人1台担当だったものを複数台担当させて効率化しようかと考えているそうです。

なにはともあれ、NTT東日本が良いサービスを出してくれました。これが中小製造業のIoT普及にどう好影響を及ぼすのかが楽しみです。









参考:NTT東日本、生産現場を「見える化」できる工場向けIoTパッケージの提供について
参考:パトライト、AirGRIDを活用した東日本電信電話株式会社(以下NTT東日本)における工場向けIoTパッケージのご案内
参考:トーメックス

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