中国・広州「SIAF2019」レポート、「自動化熱」冷めぬ市場

米中貿易摩擦に端を発した中国経済の失速。一部では設備投資を見直し、一時停止する動きも出てきているが、依然、自動化に対する需要熱は旺盛なまま。

3月10日から12日まで中国・広州で行われた自動化技術の専門展示会「SPS-Industrial Automation Fair Guangzhou(SIAF)2019」は、来場者が前年比37%増加の9万8776人と大盛況だった。その様子をレポートする。


開会式の様子

約10万人来場、前年比37%増

自動車産業盛ん

広州は中国南部の中心都市で、自動車産業が盛ん。市内にはトヨタ、ホンダ、日産、日野など日系自動車メーカーとの合弁会社の工場が点在する。また近隣にはエレクトロニクスや半導体、ハイテク産業が盛んな深セン、東莞市もある。広東省は中国国内で最もGDPが大きな省で、製造業の集積地域となっている。

SIAFは、正式名称が広州国際興業自動化技術及装置展覧会。毎年3月広州市内のチャイナインポート&エクスポートフェアコンプレックスの5つのホール(約6万2000平方メートル)を使って行われている。今年は景気が減速気味だが自動化熱は高い状態を維持している。そのため年々規模も拡大し、17年は来場者数4万9000人だったものが、18年には7万2000人となり、今年は前年の37%増となる45カ国・地域から9万8776人が来場した。出展社も20カ国・地域から988社で前年比11%増加するなど盛況となっている。

深刻な人手不足

中国も日本同様、製造現場の人手不足が社会問題化している。1979年から14年まで「一人っ子政策」が続き、いまその時期に生まれた子供が20代30代となり、働き手の中心を担っている。そもそも世代人口が少ない上に、経済の急拡大とともに需要と生産が爆発的に増えたことによって人手が不足。さらに、この世代は高等教育を受けたため、彼らが希望する就職先は工場や製造現場勤務よりも事務・オフィス作業に集中し、人手不足が深刻化している。

また人件費の高騰が急激に進んでいることも背景にある。三菱UFJ銀行の調査によると、過去10年で深センの一般工員の人件費は44.3%の上昇率で上がり、07年に212米ドルだったものが17年には518米ドルまで上昇し、今も上がり続けている。

中国政府の「中国製造2025」の後押しによる前向きな自動化もあるが、足元では一人っ子政策と人件費の高騰によって労働の構造を変えなければやっていけなくなっているという危機感もある。

IoTの前段階

業界を問わず、最近の日本の展示会ではIoTの文字がいたるところに踊り、自動化された機器や装置をいかに止めないか、効率を上げるかといったソリューションが目立つ。しかしSIAFの会場では、IoTはもちろん、中国語でIoTの表記も見当たらない。

代わりに多かったのが自動化、智能化という表記と、それに関する製品・技術。自動化やコントロール、モーション・ドライブ、センサ、ロボティクスなど自動化を構成するコンポーネンツが中心となって展示されていた。展示内容は昨年同様、中国ローカル企業は自らの製品を並べるだけ。日本やドイツなど海外企業はデモ機によるアプリケーションやソリューション展示を行い、多くの人を集めていた。

IoTやAIへの関心は高いが、実際に現場でいま必要とされているのは自動機やロボットなど。IoTの前段階、作業や工程の自動化、オートメーション化に取り組んでいるのが当地での実態のようだ。

ローカルに根付く日本企業

目を引く2分野

会場内で特に目を引いた製品分野はサーボモータとロボット。いずれも中国製造2025でも注力製品分野として挙げられており、以前から会場で多くのメーカと製品を見かけたが、今回は少し様相が変わっていた。

日系メーカーの現地担当者によると、サーボモータメーカーはここ数年、活況だったロボット市場を受けて、多くのメーカーが参入または起業したとのこと。そのため会場には中小さまざまなローカルのサーボモータが軒を連ねた。しかしその内情は、昨年までは国や自治体からの手厚い保護と、日本メーカーの製品不足や納期遅れもあって順調だったが、昨年下期からの景気減速、米中貿易摩擦、日本メーカーの生産能力の回復と製品投入によって在庫過多になり、経営的に苦しくなっている企業が多いという。

ロボットについては、昨年は多関節ロボットや協働ロボットでアプリケーションデモを行う企業が多かったが、今年は若干少なめの印象。それに代わって、直動ロボットや直動機構を組み合わせて直動や直交、ガントリー型(門型)の自動機やロボットが目立った。日本やヨーロッパでは協働ロボットをよく見かけるが、中国は人の作業の置き換えニーズが多く、協働ロボット需要はもう少し先の様子だ。

日本は13社出展

今回出展していた日本メーカーは13社。いずれも米中貿易摩擦の影響は受けて厳しい状況だとしているが、中国ローカルの自動車メーカーに比べると日系は影響が少なかったことと、ローカルメーカーによる日本製品への評価が高く、手堅い受注でダメージは最小限に抑えられているという。また広州は医療機器など新産業の振興が盛んで、需要も拡大中。高い品質と安全性が求められ、日本製品が選ばれるケースも出てきている。

ロボットの安川首鋼は、ローカル企業と組んで産業用ロボットを使った自動化アプリケーションを展示。力覚センサを使ったトイレや風呂など水回り、サニタリー製品のならい研磨や電子基板の自動外観検査のデモ、光洋電子は温湿度、振動を設備に取り付けるだけで稼働監視ができるポン付けボックスや、中国市場に開発・製造のロータリーエンコーダ等を出展。ローカル企業とのコラボや現地における企画・開発・製造などで新たな市場を開拓している。

今回初出展となったシンフォニアテクノロジーは、電磁ブレーキ、電磁クラッチ、パーツフィーダーを展示。すでに国内では高いシェアを持つ産業用ロボット向けの電磁ブレーキをローカル向けに展開。現地の自動車メーカーやティア1やティア2・3向けにも自動車ドア用クラッチも提案しているという。ローカル企業向けには製品スペックと価格が高すぎるところがあるとし、今後は中堅中小まで広げられるよう、品質そのままで価格を抑えた製品を中国向けに出していきたいとしている。