FOOMA JAPAN 2019 変化する“食の技術の総合展”、その役割

 来たる2019年7月9日から4日間、東京ビッグサイトにおいてアジア最大級の“食の技術の総合展”である『FOOMA JAPAN 2019』が開催される。今回が42回目となる同展は、“変化”に直面している。

 2018年6月に公布された改正食品衛生法、HACCP(ハサップ)対応の義務化により「食の安全・安心」への関心はこれまで以上に高まっている。そして東京オリンピック・パラリンピックによる会場問題だ。今年はこれまでメインだった東展示棟が使用できない。来年は東京ビッグサイトが完全閉鎖され、会場を大阪へと移すこととなる。

 そんな“変化のタイミング”とも言える今年、FOOMA JAPANはどう変化するのか。FOOMA JAPAN 2019 展示会実行委員会 委員長 大川原行雄氏に話を聞いた。

――今年のFOOMA JAPANでは、会場レイアウトが大きく変更されています。

 ご存知の通り、今年はオリンピックの影響もあり、従来の会場となっていた東京ビッグサイトの東展示棟が利用できません。それを受けて、FOOMA JAPANも今年は会場全体を西側へ移し、アトリウムを含む西展示棟、会議棟、そして今年の7月から西展示棟の隣にオープンする『南展示棟』を用いて開催します。

 FOOMA JAPANは、文字通り「食に関する技術がすべて集結」する総合展です。食に関する様々な分野の“最先端”、“注目の技術”を見ていただける展示会として、今年も10万人規模の来場者を見込んでいます。

 『食の技術のニッポン力(りょく)。』を掲げ、メインとなる食品製造・加工機械はもちろん、原料処理から包装・パッケージング、物流まで、世界的にも珍しい、非常に分野が広い展示会です。FOOMA JAPANには様々な業界、業種の方が訪れますので、興味関心がある分野も人それぞれです。そこで、今年は会場内を“分野別の配置”としました。

――新しくなったレイアウトは、どのように巡るのが良いのでしょうか。

 まずは事前に公式Webサイトより、会場図をご確認いただければと思います。総合展ならではの幅広い分野を見やすく回っていただけるよう、西展示棟、南展示棟、それぞれで展示分野をはっきりと分けています。西展示棟には10分野、新設の南展示棟には6分野、加えて両展示棟にまたがる形で3分野。計19分野で、690社が出展の予定です。ご来場される皆様の興味関心に合わせて、エリアを選んでいただくことができます。

FOOMA JAPAN 2019 展示会実行委員会 委員長 大川原行雄氏

 例えば、昨今の人手不足の問題や、働き方改革などの影響を背景に、生産性向上や高効率化に悩まされているのは、食品業界も同じです。そうしたテーマに関心があれば、今回から新設した『エンジニアリング・ロボット・IoT』分野などが良いかもしれません。注目のロボット技術や、IoTのつなげる技術など、61社が出展の予定です。これらを新設の南展示棟に配置しています。

 とは言え、すべてを自動化、機械化さえすればいいわけではありません。食の安全、衛生管理も重要です。昨年の食品衛生法改正により、原則全ての食品等事業者が、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理に取り組むこととなりました。こうした背景もあり更に関心が高まる『衛生対策・管理』分野も、西展示棟の1階に集中的に配置しています。

――セミナー・シンポジウムの見どころはいかがでしょうか。

 今回、衛生対策関連では『EHEDGセミナー』を予定しています。海外より、EHEDG(欧州衛生工学・設計グループ)の理事であるHein Timmerman氏を招き、会期2日目となる7月10日(水)の10時30分より講演を予定しています。食品衛生について最先端のお話を聞いていただける場になるのではないかと思います。

 食品業界はまだまだ男性比率が高い業界ですが、その中でも女性経営者をはじめ、現場で活躍する女性にスポットライトを当てた企画もあります。日本食品機械工業会の青年部が運営する『FOOMA ビジネスフォーラム』では、株式会社ABC Cooking Studioの志村なるみ副社長が登壇予定で、『AIB FOOMA 特別講演会』も株式会社日本経済新聞社の中野栄子氏(デジタル事業Nブランドスタジオシニアエディター兼NIKKEI STYLE グルメクラブ編集長)をお呼びしています。様々な視点から、食のビジネスの最前線で活躍している方々のお話を聞いていただけるのではないかと思います。是非、気になるセミナー・シンポジウムがあれば、お早めに聴講登録していただければと思います。

FOOMA JAPAN 2019 展示会実行委員会 委員長 大川原行雄氏

――Webサイトやシステムについてもリニューアルされたと聞きました。

 今年から入場方法に『クイックパス』を採用しています。事前に公式Webサイトからクイックパス登録を行っていただきます。クイックパス登録をいただくことで、会期当日はカウンターに並ぶことなくご入場いただくことができます。

 来年はオリンピックの影響で東京ビッグサイトが完全に使えなくなってしまいますので、会場が大阪へ移ります。FOOMA JAPANの来場者数は10万人を超えます。そうしたときに来場者側のスムーズで快適な入場、運営者側のオペレーションなども考慮すると、このようなサービスを導入する必要があると判断しました。

 もうひとつ『出展製品検索』のシステムも提供する予定です。例えば「リンゴ」というキーワードから、リンゴを洗う機械、切る機械、ジャムに加工するための機械などを検索することができます。会場内はWi-Fi環境も整備し、ご自身のスマートフォンや会場に備え付けのパソコンからも操作が可能となる予定です。

――ご来場される皆様へメッセージをお願いいたします。

 FOOMA JAPANにご来場されたことがある方ならご存知かもしれませんが、“実演”も本展のひとつの特長です。食品機械は、一度工場へ納品されてしまうと、企業秘密などの関係もあり、なかなかその動く様子を見ることはできません。世界的にも進んだ食文化を持つ日本ならではの、効率性・生産性だけではない、“美味しさ”を追求した各社の技術を、直に見られる貴重な機会です。

FOOMA JAPAN 2019 展示会実行委員会 委員長 大川原行雄氏

 また、今年もFOOMA JAPANでは『アカデミックプラザ2019』を行います。国内外の大学・研究所の研究者たちが、最先端の研究結果や食品開発のアイデアなどを発表する場です。FOOMA JAPANは、企業の新製品のお披露目の場だけでなく、産学官の連携、共同開発の起点としての役割も持っています。

 他業界・異分野への技術移転も役割のひとつだと考えています。例えば、粉体の技術など食品業界で培われた技術は、違う業界にも応用できる可能性がある。“食の技術”がすべて集まる総合展だからこそ、様々な業界・業種の人たちに集まっていただき、新たな出会いを生み出すきっかけになればと考えています。今回から導入するクイックパスのシステムも、将来的には出展社および来場者の様々なデータを蓄積し、マッチングやレコメンドの機能などを提供することも視野に入れています。

 来場者が抱える課題はひとつではありません。今年のFOOMA JAPANは、来場者の課題や興味関心に合わせて、会場レイアウトやセミナー・シンポジウムをわかりやすくカテゴライズしています。会場の変更に伴い、展示面積で見れば従来の3分の2ほどとなってはいますが、総合展としての価値、役割を存分に発揮できるよう、今もFOOMA JAPAN運営事務局のメンバーが総動員で動いてくれています。小さくなった分、“濃くなった”今年のFOOMA JAPANを楽しんでいただけたらと思います。