産業Ethernet フィールドバスを逆転、IoT・デジタル化が追い風

産業ネットワークの変遷(HMS、産業ネットワーク調査レポート分析)

Ethernet/IPとPROFINET 躍進

いま製造業は「つながる」がキーワード。機器同士、機器と人、現場と事務所、工場同士など、関わる人・モノをネットワークでつなぎ、最適な生産体制の構築が進められている。

そのつながるインフラのベースとなるのが「産業ネットワーク」。IoTやスマートファクトリーが声高に叫ばれるようになったここ数年で大きく変化している。

産業ネットワークは、フィールドバス、フィールドネットワークとも言われ、PLCやセンサ、モータなど製造現場の制御機器をつなぎ、情報のやりとりの基盤として生まれた。1979年に策定されたModbusをはじめ、87年にPROFIBUS、90年代にDeviceNet、CC-Linkなど多くの規格が策定され、いまの工場の自動化やIoT、スマートファクトリーの土台となっている。

90年代半ばのWindows95の発売を機に、世間ではEthernetをベースとしたインターネット通信が急速に普及。それにともなって産業ネットワークもEthernetベースの開発が進み、2000年前後にPROFINET、ModbusTCP、Ethernet IP、EtherCAT、Powerlink等が登場。07年にCC-Link IEが加わり、主要なプレイヤーが揃い、現在に至る。

2010年代になるとインダストリー4.0、M2M、IoTがトレンドとなり、Wi-FiやBluetooth、4G、LPWAなど製造現場におけるワイヤレス通信のアプリケーション開発と本格使用が開始。また直近ではEthernetの次世代規格であるTSNが登場し、各産業ネットワークが対応を発表。産業ネットワークも新しい時代に突入している(表1)。

ITとOT融合の流れ 産業Ethernetがスタンダードへ

HMSインダストリアルネットワークス社は毎年、世界の産業用ネットワーク市場シェア動向を調査し、レポートにまとめている。

それによると、2015年の産業ネットワークにおけるフィールドバスとEthernetのシェアは、フィールドバスが66%、Ethernetが34%と倍近くの開きがあったが、翌16年にはフィールドバスが58%、Ethernetが38%へと接近。

Ethernetの年間成長率20%に対し、フィールドバスは7%にとどまっており、この時期にはすでに産業ネットワークの主流がEthernetに移っていることが分かる。

17年には産業ネットワークの勢いが増して46%まで拡大。フィールドバスは48%にとどまり、両者が拮抗。18年にはついにEthernetが52%、フィールドバスが42%と逆転することとなった。19年にはその差が広がり、Ethernetが59%に対し、フィールドバスは35%に低下。現在、フィールドバスは減少傾向にあり、産業Ethernetが標準になりつつある。

ネットワークごとのシェア(図1)は、産業EthernetベースのEthernet/IPとPROFINETが年々シェアを拡大し、18年にPROFIBUSを抑えて、シェアトップと2位に位置している。

またワイヤレスも堅調にシェアを獲得し、15年にはじめて登場(4%)してから、6%と拡大し、今も年間平均成長率30%の勢いで伸びている。

出典:HMSインダストリアルネットワークス「産業用ネットワーク市場シェア動向2019(HMS社統計)」