NTTアドバンステクノロジ、工場向けソリューション「5KAN CRAFT」展開

心強い製造現場IоT 熟練工の技術継承目指す

どんなに製造現場へのAIやIoT、ロボット導入や自動化が進み、そこで働く人の数が減っても、いなくなることは決してない。それどころか、人数が減ることで1人あたりの裁量と作業負担は大きくなり、1人作業も増える。だからこそ現場で働く人へのサポートやケアが今以上に必要とされる。

NTTアドバンステクノロジは「現場で働く人の支援」にスポットを当てた工場向けIoTソリューション「ゴカンクラフト(5KAN CRAFT)」を展開している。

右から伊藤昌幸 主幹担当部長、山本洋介 主任技師、工藤美穂 主査

快適に効率良く

もともと同社はNTTグループを中心としたシステム開発や保守・運用、ネットワークのインテグレーション事業などを手掛け、音声や画像、コミュニケーション技術を得意としている。ゴカンクラフトはそこで培った技術を使い、人の五感とそのはたらきに焦点を当て、人が快適に、楽しく、効率良く働けることをサポートするものとして開発された。

クラウドIоT事業本部 伊藤昌幸主幹担当部長は「いま求められているのは、人の作業をAIやロボットに置き換えることより、人が行っている作業の補完。過酷な現場でタフな仕事を担当している人は多く、いかに人がミスなく、ムダなく、気持ちよくスムーズに作業を行えるようにするかが重要だ。また人手不足で1人作業となる現場が増えており、それを懸念する声は高まっている」とし、山本洋介主任技師は「ゴカンクラフトは熟練工のノウハウを継承することがコンセプト。彼らが目で見て、耳で聞き、肌で感じてきたものを引き継ぎ、次代の人たちの作業を効率化し、負担を減らせるように支援をする。熟練工にしか分からない領域に対しても、当社のコミュニケーションやヒアリングの専門家が現場と一緒になって情報を引き出し形式知化している」という。

見守りと設備監視

ゴカンクラフトは人の見守りと設備監視サービスの2種類で構成。「人と設備を見守り、可視化し、アラートを出す」ことをベースに、人の安全性や生産性向上のための要素が加味されている。

人の見守りは、作業員の状態や事故・体調不良による異常を検知して通報する「作業員みまもり」、作業員の睡眠が十分足りているかを見て事故の可能性を減らす「睡眠見える化」、暑さをモニタリングして熱中症を防ぐ「暑さ指数計測」の3種類のサービスを提供している。

設備監視サービスは、点検記録入力の簡易化や設備データ収集と活用のための「点検レコーダDX」と、既存設備に後付けして状態監視ができる「アドオン振動センシング」を展開。

点検レコーダDXは、タブレットや音声入力を使った点検記録の入力効率化だけでなく、遠隔地にいる相手との通話や情報共有、前日や過去の点検データの確認など、1台の端末で点検作業に必要な要素をカバー。現場の写真撮影や音データの収集機能も備えている。さらに、そこで集めたデータから目視検査を自動化するAI、音診断による予兆保全のAIプログラムを作成するAIサービスも提供している(スマート画像点検DX、スマート異音点検DX)。完成したAIを使って現場で設備腐食や品質判定、異音検知なども可能だ。

サービスのイメージ

山本氏は「点検レコーダDXは単なる点検のデジタル化ではなく、プラスアルファで点検作業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する。いまはレコーダ機能が主だが、今後は点検レコーダDXを現場のコミュニケーションハブにし、現場の人の助けになりたい」という。

アドオン振動センシングは、本質安全防爆対応センサ、長距離省電力無線通信、自立電源の使用により、危険な防爆エリアや電源のとれない箇所など場所を問わず、必要な期間だけ取り付けて使えるようになっている。

働き方改革実践へ

今後について、伊藤氏は「いま企業も人が大事という感覚になっている。製造現場では若手の人手不足に加え、最近は外国人も多い。彼らを活かすためには形式知とすることが大事だ。また作業みまもりサービスも、いまは会社から着けさせられている感がある。そうではなく、着けていて良かった、これがあったおかげで助かったという好循環をつくり、着けている人とその家族、会社にとってハッピーな状態にしていきたい」と話す。

また工藤美穂主査は「ゴカンクラフトのサービスは、人が持つ五感を大事にしながら、人を助ける、支えるという意味を込めている。人を助けることは経営者にとっても働き方改革につながる重要事項。古い工場や現場の困りごとに応えていきたい」と話している。

参考:NTTアドバンステクノロジ