-10年に著書「スマート・ファクトリー戦略的『工場マネジメント』の処方箋」を出版した。
製造業が取り組むべきこととして、10年に工場すべてをネットワークでつなぐことの有用性を「スマート・ファクトリー」という表現で提唱した。その時に国内の商標登録も取得した。
同時に、フィールドバスからERPまですべてつながった生産ラインを作り、デモセンターを開設。これまでに経済産業省や大手企業など100社以上の見学者が訪れている。今では「スマート・ファクトリー」を実現するモジュールを開発し、提供している。
IoTやインダストリー4.0が話題になっているが、すべて当社が昔から考えていたこと、すでに実現していることとして冷静に捉えている。
-スマート・ファクトリーの定義を教えて欲しい。
一言で言えば、「ERPなど基幹システムと、製造管理システム(MES)、現場のFA機器がつながった工場」のこと。そこで相関データを取って分析し、工場と経営の全体最適を図れるようにすることだ。
日本の製造業は、自社でスマート・ファクトリーはできている、センサでデータを集めているという。しかし実際には、「工場にいくつの検査工程があり、不良が発見されなかった工程はどれか?」「工場の電気代は月々いくらか?
ピーク時間は何時?」「工場には紙の帳票がどれだけあるか知っているか?」「チョコ停の一番多い設備はどれか?
それはひと月でどれだけ止まっているのか?」といった基本的な質問に答えられない。
工場内は陸の孤島がバラバラとある状態。データを取っていても、それは部分的で一時的でしかなく、恒久的にデータを集めて一元管理し、経営に生かしていない。それが現実だ。こうした状況を解決するには、トータルに取り組むためのインフラが必要。工場をネットワーク化すればできると考えたのがスマート・ファクトリーの始まりだ。
-日本ではインダストリー4.0とIoTがなかなか進んでいかない。
それらには四つのゴールがある。
(1) 生産性向上など自社のパフォーマンス向上
(2) 自社のビジネスモデル変革
(3) 自社製品の機能、価値の向上
(4) 新たなビジネスの創出
このなかから自社は何を望み、そのために何をするのかを考えなければならない。日本企業で進まないのは、このゴール設定、ビジネスシナリオが描けていないことが大きい。もうひとつ大きな阻害要因がある。社内にリスクを取り、推進するリーダーが不在なことが多い。
スマート・ファクトリーに取り組んだ人のほとんどが「見えないものは改善できない。見えて初めて改善が始まる」「データを見て初めて気づけることも多々存在する」「人間の認識と実際のデータは大きな相違があるものがある」と口をそろえて言う。これはすべてROIに換算できるものでもない。スピード感が重要だ。
-御社はどのように取り組んでいくのか?
当社は、FA設備を設計できるようなエンジニアと、経営を語るコンサルタントを擁している。お客さまの経営陣、情報システム部門、生産技術部門の間に入ってお互いを連携させることができる。当社のスマート・ファクトリーを導入して成功した例として、ある自動車部品メーカーの生産性向上を目指しての取り組みがある。
これまで紙の帳票で報告していた設備停止の情報をシステム化し、報告数が10倍に増加。従来把握できていなかった設備停止が明るみに出てきて多くの改善につながった。またベテラン作業員と新人の作業の仕方を分析し、作業方法の改善から工程の組み立て、人員の配置まで改善した。こうした取り組みの結果、導入9カ月で10%強の生産性向上に成功した。
また別のメーカーでは、すべての工程と製品でトレーサビリティができるようになっている。それを取引先が高く評価してくれ、発注量が増えたという。製品がコモディティ化し、ハードウエアで差別化するのが難しくなるなか、サービスやソフトの部分で差別化していかないと世界では生き残っていけない。
出典:オートメーション新聞
エイムネクスト株式会社
Amazon:スマート・ファクトリー ―― 戦略的「工場マネジメント」の処方箋
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