パナソニックが取り組むAI活用とは? DataRobot×パナソニックトークセッションから

DataRobot(東京都中央区)は、誰でも簡単に超高精度の予測モデル生成ができる世界でも最先端の機械学習自動化プラットフォームとして知られる。「AIの民主化」というメッセージのもと、多くの人がAI活用できる状態を目指している。同社は5月31日、早くから同社の技術を取り入れてAI活用を進めてきたパナソニックから、ビジネスイノベーション本部AIソリューションセンター戦略企画部井上昭彦部長を迎えてパナソニックのAI戦略についてトークセッションを行った。

DataRobotとは?

DataRobot(データロボット)は、2012年にアメリカ・ボストンで設立。専門家でないと難しいとされた機械学習を、優れたデータサイエンティストの知識や経験等をプラットフォームに実装して誰でも使えるように自動化・簡素化した機械学習自動化プラットフォームを提供している。日本では2012年に日本支社を立ち上げ、2017年度から本格展開を開始。すでに国内でも大阪ガス、トランスコスモス、リクルート、三井住友カード、パナソニックなど、様々な業界大手に採用されている。

インターネット時代の敗北をAIでリベンジしたい

トークセッションはDataRobotのデータサイエンティストシバタアキラ氏とパナソニック・井上昭彦氏の対談系式で行われ、パナソニックのAI戦略について意見を交わした。

第3次AIブームと言われるように日本でもAIへの関心が高まっているが、実際は大手企業でもAIの取り組みはまだまだ。それに対しパナソニックのような超大手企業がそうした先進的な取り組みを早くから行えたのはなぜか?
この問いに井上氏は「20世紀に電化、デジタル化で成功し、大量生産時代は良かったが、21世紀のインターネット時代になって勝つことができなかった。そこにリベンジしたかったというのが一番。2015年にパナソニックの技術に関するビジョンを決めた時、IoTとAI、ロボット、エネルギー分野に注力することになった」としている。

新事業創出と既存業務プロセス変革に利用
AI人材育成からスタート

AIを何に使っているのか?との質問では、新事業と既存事業の改善の2つを挙げ、「従来の大量生産のものづくりビジネスを変えて新しいものを生み出すことと、業務プロセスがアナログ的なのでそこにAIを使って効率化を進めている」という。

具体的にAI戦略を進める際に何から着手したかについて、井上氏は「人材育成」と回答。2015年にAI推進室を立ち上げ、AIを活用できる人材を1000人育成することを目標とした。社内から希望者を募って研修を行い、毎年100〜200人の受講者が参加。約2年で300人の育成が完了したとのこと。受講者の多くが20代から30代の若手クラスで、現場に近いR&Dの人材の参加が多いという。人材育成のツールとしてDataRobotを使ったが、はじめこそ多くの人が面白がって使ったが、徐々に利用者は減っていったという。一方でヘビーユーザーは一部残り、彼らを見ると業務を熟知している人が多かった。

井上氏は、AIをうまく使うためには業務とAIを理解しておくことが必要で、特に事業部、現場の人がAIを使うようになるのが理想だとしている。しかし、実際には現場業務の理解が薄いR&Dや若手人材の参加が多く、なかなか難しいと話している。
またパナソニックはシリコンバレーのAIスタートアップであるARIMO社を買収したが、その影響については、「以前から画像に関する機械学習はやってきたが、センサデータや時系列データを強化しなければならなかった。ARIMOのデータアナリティクスのプロ集団が加わったことによってバランスが取れるようになってきた」という。専門家の知見を入れてすぐにビジネスにつなげる取り組みと、DataRobotを使って社内のAI人材を強化する両輪が同社のAI利活用における戦略の柱となっている。

汎用的であるがゆえ。専門型・特化型が使いやすい場合も

DataRobotをAIツールとして社内の人材育成に有効活用しているが、改善を望む点も。
DataRobotは「AIの民主化」と言う通り、AIの専門家でない人でも使える汎用性がある一方、ターゲットや課題がはっきりとしている人にとってはフォーカスがぼやけてしまい、使う側が使い方を考えなければならないこともある。逆にある用途に特化したツールの方が使い勝手が良いという場面もあるという。

とは言え、パナソニックでもまだAI戦略は始まったばかり。目覚ましい成果や製品が出ている訳でないのも事実。いまはようやく土台作りが終わったところだ。井上氏は「日本の製造業を元気にしたい気持ちはもちろんある。ものづくりメーカーの業務プロセスを変革し、新しいサービス開発に期待してほしい」とセッションを締めた。

参考:Datarobot

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