MEMOテクノス(神奈川県相模原市)は、2006年創業の産業向けの音響放送装置と自動機等の特注機器メーカー。公共交通機関向けの放送装置や製造装置などの受託開発・製造を主とし、ここ数年はその技術を活かして自社製品の開発・提供を進めてきた。
同社が着目したのが地方の中小企業向けのIoT。必要性が高まっているにも関わらず、なかなか普及が進んでいない。そこに対して、さまざまなツールを開発し提供している。
3万円で導入できるIoT
Googleの無料サービスを活用して開発
IoTを始めるには
1.データを取る
2.データを貯める
3.データを分析する
という3つを揃える必要がある。通常、一般的に販売されているIoTサービスは、ユーザーがこれらのシステムを使い、それに対する月額利用料を払う仕組みだ。
一方、同社の「愛子」は初期導入費用の3万円のみ。そこにはセンサを取り付けて使うIoTデバイスと、データを貯めるクラウドサービスが含まれている。センサは別売りだが、同社でも温湿度や電流、距離センサなど主なセンサを取り扱っており、いずれもおよそ5000円以内で済む。愛子と合わせて3万5000円あれば、データを集めて分析する最もシンプルなIoTをスタートできる。
それを可能にしたのが、Googleが提供している無料サービス等の活用。センサとIoTデバイス、Googleスプレッドシートが連携する仕組みを開発し、それが「aiko」の基盤となっている。
ユーザーはIoTデバイスにセンサをつなげるだけでデータが自動でクラウド上のGoogleスプレッドシートに書き込まれる。あとはそれをCSVでダウンロードして使う、自分でExcelを使って分析するなどユーザーの自由。応用はいくらでも可能だ。
RRIのIoTユースケースにも選定
同製品は、もともとは社内の働き方を効率化するために開発した。それがロボット革命イニシアティブ協議会のIoTユースケースとして認められ、そこから外販に舵を切った。18年2月から発売を始めたばかりだが、すでに中小の装置メーカーの稼働監視システムの基盤として使いたいなど具体的な引き合いが来ているという。
「機械に稼働と状態監視のためのIoT機能を付けたいといった時、最も安く、手軽な形で追加できる点が高く評価された。丸裸の状態で提供することで、ユーザーが改良を加えることもできる」(渡邊社長)。
ニッチでも便利なIoTツール開発へ
同社はこれ以外にも、サーバールーム内のエアコンを外部から稼働でき、停電後の早期復旧に役立つ「涼子」、1台でデータロギングと簡単な制御ができ、農家のビニールハウスの温度制御等に使える「優子」など、特定のアプリケーションに絞ったユニークなIoTツールを展開している。
渡邊将文社長は「町工場など地域の中小企業は、これからIoTが必要だという意識はあるが、実際は一部の行動力のある人しか始められていない。資金的な余裕もなく、詳しい人材もいない中小企業にとって、IoTを始めようと思っても、何ができるのか、自社にどんなメリットが生まれるかが分からないと投資は難しい。だから、最も小さな費用で簡単にIoTをはじめ、何ができるかの感覚を掴んでもらうことが大事。まずはそこからだ。これからも中小企業で求められる自動化、ニッチな要望に対してピンポイントに製品を作り、柔軟に安く提供していきたい」と話している。