[IoT等活用事例] 三色灯の光から機械の稼働を可視化するIoTシステムを独自開発・商品化(飯山精器)

事例のポイント

  • ⽣産管理の煩雑さを解消するため、製造業が⾃らIoTシステムを開発
  • 古い⼯作機械でも、配線など複雑な作業なしで使える等、ものづくり企業ならではの視点の簡単ツールを開発・販売

企業概要

飯山精器(長野県中野市)は、創業から70年余りの会社。旋削や研磨を強みとし、NC旋盤、センタレス研磨機等を⽤いて、丸物部品の加⼯を専業で⾏う。

近年は、建設機械⽤部品製造や難削材加⼯に注⼒している。顧客は、⻑野県内の⼤⼿から中堅企業まで様々。また、ベトナムに⼯場を設置するなど、海外展開にも積極的。

解決を目指した課題

量産品の⽣産が多かった時代には、ひと⽉に1,000ロット単位で発注を⾏う顧客が多かった。現在では100ロット程度での発注を複数回にわたって⾏う顧客が主となっている。

さらに、近年、顧客から⾒積回答の迅速化、短納期対応が強く求められている。このような環境変化もあり、社内の⽣産管理が煩雑になり、管理作業の負担が⾼まっていた。

課題への対応

きっかけ・経緯

従来、同社では⼤⼿IT企業の⽣産管理システムをパッケージで導⼊していたが、⾃社の⽣産⼯程には合わない仕組みであったこともあり、⼗分に使いこなせていなかった。

その中で、他により良いシステムがないか探したものの、同社で上⼿く使えそうな仕組みが⾒つからなかった。

そこで、地域のIT企業に所属する知⼈に相談しつつ、また「ものづくり・商業・サービス新展開⽀援補助⾦」を活⽤して、必要なシステムは⾃社で作ろうと考えた。

具体的な解決手段

このような背景のもと、同社では2011年頃、⽣産管理の負荷の解消を⽬指した独⾃⽣産管理システム「i−PRO」を開発した。これにより、現場作業員がタブレット端末を使って作業の着⼿・完了状況を⼊⼒することで、⼯程進捗状況が可視化され、事務作業員が管理⽤PCから⼯程進捗を簡単に確認できる環境を構築した。

さらに、⼯程進捗状況に加えて、⼯作機械等の稼働状況を可視化したいという現場ニーズを踏まえ、16年にIoTシステム「i−Look」を開発した。「i−Look」は、三⾊灯の光をセンサで読み取り、⼯作機械等の稼働状況を取得し、管理PC上に稼働中の⼯作機械は緑⾊、電源が⼊っているが⽌まっている場合は⻩⾊、アラームが出ている場合は⾚⾊等と可視化する仕組みである。

さらに、上記のIoTシステム「i−Look」は、製造業においては⼗分に活⽤メリットのある仕組みであると考え、⾃社内で活⽤する他に外販を開始した。そして、既にいくつかの企業での導⼊実績等がある。

▲⽣産管理システム「i−PRO」(左)と機械の稼働状況を可視化する「i−Look」(右)

メリット・効果

多品種少量⽣産・短納期業務の場合、頻繁に顧客から、電話での進捗状況の問合せがある。従来は、事務職員が進捗確認のために作業現場まで確認に⾏く必要があり、その対応に相応の負荷がかかっていた。

しかし、⽣産管理システム「i−PRO」を活⽤することで、顧客から作業状況の問合せがあった際には、管理⽤PCの画⾯を⾒て、どこまで進捗しているかを簡単に説明できるため、電話対応の負荷が⼤幅に削減した。

また、「i−PRO」ではリアルタイムに⼯程の状況(遅延等)が可視化されるため、作業遅延への早期の対応が⾏えることや、在庫管理も適切に⾏うことができ、無駄な材料等の購⼊を抑えることができるなど効果があった。

 

設備の稼働状況の確認についても、従来は作業現場まで⾏って確認する必要があった。「i−Look」により、⼯作機械の稼働状況を簡単にPCで確認できるようになり、確認作業の効率化につながった。

特に、海外⼯場の設備の稼働状況の確認作業には効率的である。さらに、「i−Look」を活⽤することで、例えば、1カ⽉あたりの設備ごとの稼働率も可視化でき、稼働率を向上させるための具体的な検討や取組も⾏えるようになった。

同社は、このように「i−PRO」や「i−Look」を活⽤することで、多品種少量⽣産のために煩雑化した⽣産管理や、設備の稼働状況の確認作業等を効率化している。今後はさらに、迅速に⽇次での利益確認が可能な仕組みを⽬指して取組を進めようとしている。

 

出典:経済産業省関東経済産業局「中小ものづくり企業IoT等活用事例集2017」