「NinjaConnect ISM」 ITとOT セキュアに融合
製造業のデジタル化、IoTやデータ活用の深化によって、つながる・つなげる対象が工場内の機器・装置同士から、工場と本社、工場と工場、工場と取引先など屋外へと拡大している。さらにクラウド利用も活発化するなかで、一方でセキュリティに対する懸念が高まっているのも事実だ。
リモートアクセスで国内トップシェアのe-Janネットワークス(東京都千代田区、坂本史郎代表取締役)はクラウドDMZによってITとOTをセキュアに融合する通信サービス「NinjaConnect ISM」を工場向けに展開する。
セキュアな通信として最も広く使われているのがVPN(バーチャルプライベートネットワーク)だ。VPNはインターネット上に仮想の専用線を設けて通信するものだが、原理的にはFirewallに穴を開けて相互通信を可能にするものであり、どんな堅牢な仕組みを構築してもマルウェアが入り込む隙間ができてしまう。
それに対し、詳細な個人情報など重要な情報を取り扱う企業では、企業ネットワークとインターネットの間にDMZ(非武装地帯)を設け、お互いを分離しつつも通信できる技術を採用している。DMZには重要な情報は存在せず、外部から攻撃を受けても被害を最小限に抑えることができる。またインターネットを通じて外部からセキュアに内部システムにアクセスも可能だ。
このDMZの仕組みをクラウド化し、産業向けに展開しているのがe-JanネットワークスのNinjaConnect ISMだ。
同社はテレワーク向けのリモートアクセスサービス「CACHATTO」を展開し、国内55万ユーザーを獲得しトップシェアを持っている。中央官庁や銀行、生命保険、鉄道、ITなど、公的機関や社会インフラ等で採用され、サービス展開以来17年間、情報漏えいなど1件の事故も発生させていない。今回CACHATTOをベースに産業向けにNinjaConnect ISMを開発し、製造業向けに発売を開始する。
システム構築は、専用端末の「Ninjaコネクタ」を工場内ネットワークに設置するだけ。外部PCやスマートフォン、タブレット等からWEBブラウザを通じて寄せられた要求を、NinjaコネクタからDMZに取りに行き、それを内部システムで処理したら、その情報をWEBブラウザを通じて戻す。表向きはWEBブラウザを通じてシームレスなやり取りとなっているが、実際は外部と内部システムは分離した状態で要求を処理している。そのため高セキュリティで安全なアクセスを可能としている。
2月から国内で販売を開始し、価格は1工場あたり月額6万円。当初は工場内の制御PCにあるログファイルの遠隔からの閲覧、ソフトウェアの遠隔アップデート、ファイルや情報の自動バックアップなどの機能を提供。これから機能拡充を進め、22年度までに600工場の導入、3億円の売上高を目指す。
すでにインド4大IT企業のひとつであるWipro社の複数工場で導入され、SCADAの管理画面への遠隔アクセスとリアルタイムモニタリングなどに使われている。坂本史郎代表取締役は「はじめの機能は限定的だが、ニーズはまだすべて見えているわけではない。お客様と一緒に深化していくことを約束する。セキュアなリモートアクセスを専業でやってきた強みを生かし、工場領域でも提供していく」としている。