“組込み技術”から、“エッジテクノロジー”の最先端へ。 ― ET/IoT Technology 2018 の見どころと巡りかた

【展示会主催者インタビュー】ET/IoT Technology 2018

一般社団法人 組込みシステム技術協会理事 ET事業本部長 渡辺博之氏

 2018年8月29日、品川のプレス発表会の会場において、大きく様変わりしたET/IoT Technology 2018のコンセプト、そして見どころが発表された。それから約2ヶ月。いよいよ来月、11月14日に迫った会期を前に、一般社団法人 組込みシステム技術協会(略称JASA)理事であり、ET事業本部長である渡辺博之氏に今回の“変化”の背景、そして会場の見どころと巡りかたについて話を聞いた。

(JASA理事 ET事業本部長 渡辺博之氏)

(JASA理事 ET事業本部長 渡辺博之氏)

― 今回、<ET×ET(エッジテクノロジー)>をキャッチフレーズに、展示会のコンセプトが大きく変わった印象です。これにはどのような背景があったのでしょうか。

これまでのEmbedded Technology、IoTというテーマは、実はその輪郭が曖昧でした。様々な展示会が乱立するなかで、ET/IoT Technology という展示会がターゲットとする領域、スコープを明確にする必要があったのです。そんななか、クラウドからの急速なエッジシフトの流れで注目が集まっていたのが『Edge Technology(エッジテクノロジー)』でした。

(2018年8月29日、プレス発表会での発表スライド)

(2018年8月29日、プレス発表会での発表スライド)

ET/IoT Technology 2018では、IoTの新潮流であるエッジコンピューティングをいち早くキャッチアップし、コア技術である『Edge Technology』にフォーカスをあてています。<ET×ET(エッジテクノロジー)>をキャッチフレーズに、その最先端情報を一望できる展示会として展開いたします。

今回、オムロン社やアステリア社など、本展に初出展となる企業もあります。エッジテクノロジー、エッジコンピューティングというキーワードは、本展の領域を表すものとして、出展社にとってもわかりやすいものになったのではないかと考えています。

また、展示会の役割はマッチングだけではありません。主催であるJASAは業界団体でもあります。啓蒙と言うとおこがましいかもしれませんが、我々だからこそ発信できるメッセージや見方、ビジョンがあるはずだと考えています。これまでの『ET』は『Embedded Technology』でしたが、これからの、IoT時代における『ET』は『Edge Technology』です。今『Edge Technology』のトレンドがどこへ向かっているのかをお伝えする場、知っていただく場として、よりメッセージ性が強くなっているかと思います。

今年のテーマパビリオンもそのひとつです。そうした技術の最先端、トレンドを実際に見ていただくことができる場として、今年のメッセージ、キーワードを体現するものとなっているかと思います。また今回、新たな試みとして、スタートアップ企業の出展を(1コマ分)無料としました。この背景には、近年のスタートアップの勢いがあります。彼らは、商品開発のスピードがとても速く、様々な試行錯誤が必要なIoTとの相性も良いのです。

スタートアップがフィーチャーされる展示会は他にもありますが、本展の違いは、ビジネス、マーケットドリブンなスタートアップが集結しているという点。決して技術ドリブンだけではない、“地に足のついたもの”が集まっています。会期中は、メインステージ、パビリオンの両方で、スタートアップによるショートスピーチ、ピッチイベントを実施しています。オープンイノベーションという社会的な潮流もあるなかで、大企業とスタートアップのマッチングも重要です。エッジテクノロジーの最先端がここから生まれることを期待しています。

また、スタートアップという文脈では、今回シリコンバレーよりスタートアップワールドカップの主催でもあるFenox Venture Capital(フェノックス・ベンチャー・キャピタル)の共同代表パートナー&CEOのアニス・ウッザマン氏の来日講演も急遽決定しました。シリコンバレーの投資家の視点から、世界最先端のAI・IoT・エッジコンピューティング技術に対する取り組みについてお話しいただく予定です。

― 新しいET/IoT Technology の見どころはどこになるのでしょうか。また、今回の新しいコンセプト、テーマにおいて、どのように会場を巡るのが良いのでしょうか。

まず、今年の見どころはカンファレンス、基調講演です。これまでもカンファレンスには力を入れていましたが、今年は決して“おもしろさ”だけではありません。誤解を恐れず言えば、“生々しさ”があります。

講演は今年のピックアップテーマである「次世代モビリティ」、「エッジAI」、「エッジコンピューティング」、「ハプティクス」とつなげる形で、テーマごとに素晴らしいスピーカーの皆様をお呼びしていますが、注目いただきたいのは、これら講演が講演同士、また展示会のテーマと密接につながっていること、そしてそのデモ、実物がパビリオンで見られるという点です。

例えば「次世代モビリティ」のテーマでは、アセントロボティクス社とデンソー社による基調講演があります。デンソー社からは、今年1月に米国ラスベガスで開催された2018 International CES において、トヨタが発表したMaaS※専用次世代電気自動車『e-Palette Concept』について、その『e-Pallet Concept』を動かすためのプラットフォームと、その実装について語っていただきます。

アセントロボティクス社からは「車に知性を与える自動運転AI」というテーマで、クラウドがいらず、エッジだけで走る自動運転についてお話しいただきます。そしてパビリオンでは、実際にアセントロボティクス社の“自動運転車”が展示され、実物として、後ろに大量のGPUが積まれた車を見ることができます。更にそのGPUを提供するエヌビディア社にもまた「エッジにおけるAIコンピューティング」のテーマで登壇いただきます。

このように今年のET/IoT Technology では、カンファレンスが非常に重要な役割を持っています。なので、当日の会場の巡りかたとしても、カンファレンスが中心になってくるでしょう。

会場図より筆者作成/会場図提供:株式会社JTBコミュニケーションデザイン

(会場図より筆者作成/会場図提供:株式会社JTBコミュニケーションデザイン)

まず、会場図左手が講演会場となります。ここで基調講演をご聴講いただくことで、各テーマにおける最先端の技術動向やアプローチを知っていただけます。そしてそれを実感できるのがピンクで囲われているエリアにあるテーマパビリオンです。最先端の技術を導入、実装した実際の製品を見ていただくことができます。そして、今勢いを増しているスタートアップ企業のピッチもステージで聞いていただけます。そのなかでご来場者の皆様が関心をもった領域や技術について、周りの関連展示へ進んでいただく。そのような構成になっています。一方で、初めから目当てのブースがある場合には、会場右手つまり駅側のAホール、水色のエリアから入っていただき、各社の展示ブースへ直接お越しいただくことも可能です。

― ご来場予定の皆様へメッセージをお願いいたします。

従来、Embedded Technologyとしての『ET』と言われていたところが“エッジ“と呼ばれるようになり、急速なクラウドからのエッジシフト、エッジヘビー化で、今Edge Technologyとしての『ET』が注目されています。

今年のET/IoT Technology では、「エッジ領域でどこまでのことができ、どんなもの(新たな価値)を生み出せるのか」をテーマに置いています。現実のエッジテクノロジーの進化を是非会場で実際に見ていただき、それを活用することでどのようなサービスが可能になるのかも見てほしいと考えています。展示会そしてカンファレンスを通して、業界、マーケットの変化、活況を体感していただけるのではないかと考えています。

また、今年からは来場登録の仕組みも変わっています。Webからの事前登録で、来場者証がメールで届きますので、それを印刷し、当日会場にあるネックストラップへ差し込むことで入場可能となります。是非、本展公式Webサイトより来場事前登録をお願いいたします。

― ありがとうございました。

※MaaS – Mobility as a Service:モビリティ・アズ・ア・サービス、様々な交通手段による『モビリティ』つまり『移動』を1つのサービスとして捉える概念を指す。