パナソニック、新事業「現場マルチネットワークサービス」提供開始

パナソニックとパナソニック システムソリューションズ ジャパンは、4月1日から新事業「現場マルチネットワークサービス」の提供を開始する。同時に、同事業をダイナミックに推進するため、全体のハブ機能を担うネットワークサービス事業センターを立ち上げる。

同社は、人やモノの動きをデジタルデータとしてとらえ、サイバー空間で分析し、そこから生まれた新たな価値で経営課題を解決する「現場プロセスイノベーション」を主力事業に掲げている。

2020年7月にこれを実現するためのコア事業として、「現場センシングソリューション」を発表し、今回、ここに並ぶもう1つのコア事業として、新事業を発表した。

具体的には、プライベートLTEやローカル5Gなどさまざまな活用が期待されているセキュアなローカルネットワークと、同社が保有するタブレット端末やネットワークカメラなどのつながるエッジデバイス、画像センシングなどのソフトウェア(ソリューション)に、防災などの人の命にかかわるようなミッションクリティカルな現場で使われてきた無線インフラを支える知見、体制を組み合わせることで、より多くの業界のユーザーに提供するというもの。

そして、これらをサービスとして切り出すことにより、今後はさまざまな役割のパートナーにも使用してもらうビジネスモデルの構築を目指していく。また同社には無いエッジデバイスやテクノロジーをもつパートナーとの共創も視野に入れているという。

パナソニックのエッジデバイス・ソフトウェアに加え、多くの知見を持つ無線ネットワークシステムをサービスとして提供することにより、経営や社会の課題を根本的に解決する鍵である「現場プロセスの改革」を進め、現場と経営をつなげることで、「現場プロセスイノベーション」を実現していく。同事業により2025年に累計1,000億円の販売目標を目指すとしている。

1. 無線ネットワーク

(1)ネットワークラインアップ

・プライベートLTE(自営等BWA/sXGP)
既に実用化済みの自営等BWAに加え、2021年6月にsXGPを発売予定。

・ローカル5G(Sub6・SA)
2022年4月発売予定。

ローカル5Gについては、これまでの無線事業やコンシューマー向け携帯電話事業で培ったノウハウに基づき、ローカル用途に絞ったかたちでの構成としていく予定。認証・セキュリティ管理、セッション管理、ポリシー制御等の機能について、必要な機能、規模に絞った仕様とすることで、コアネットワーク装置と基地局の組み合わせで従来の5分の1以下の価格での提供を予定。

また、キャリア網との連携も可能とする中継用リンク装置5G-GateWayは実用化済み。

・Wi-Fi
IEEE802.11ac注6用アクセスポイントは実用化済み。Wi-Fi6は2021年10月発売予定。

これらのネットワークが個々に機能を発揮するだけではなく、それぞれのネットワーク間を繋ぎデータのやり取りを可能とすることで、現場のニーズに合わせた最適なネットワークの提供を可能にする。

(2)ネットワークのマルチアクセス制御を実現

現状のユーザーの現場では、既設のWi-Fi等と連携しつつ、LTE、5Gといった新たなネットワークを構築、導入したいという要望がある。同社は、このような複数のネットワークを統合的に管理・運用するマルチアクセス技術の開発に着手。

その第一段階として、複数のPLMN-ID(携帯電話の国際的な識別番号)を認証するLTEコアを2021年6月より販売を開始する。共通のLTEコアで自営等BWAとsXGP、それぞれのシステムのSIMを認証することができるため、これらのネットワークの統合的な管理が可能となる。これにより、例えば屋外などの広域エリア(自営等BWA)から、屋内エリア(sXGP)においてシームレスな移動が可能となる。

第二段階として、このLTEコアの開発のノウハウを活かし、2022年4月発売予定のローカル5Gにおいては、LTE・5Gに加え、SIMを搭載しないネットワーク機器(Wi-Fi等)も統合的に認証することが可能な5Gコアを導入する。5Gコアでさまざまなネットワークの制御を一元管理することで、複数のネットワークを統合的に運用しつつ、通信方式が異なる端末ごとのQoS制御も可能となる。またネットワークの管理も一元化できるので、運用・管理コストを低減することも可能となる。

(3)当社独自の画像伝送技術

同社は、ビデオカメラなど映像機器で長年培った画像圧縮など関連要素技術を多数保有しており、この技術に加え、HDコムなどのテレビ会議システムで培った画像伝送技術を活用し、変動が大きい無線回線でも、低遅延、滑らかな画像を伝送する技術を導入致する。

5Gのような超大容量帯域にも追従可能な無線回線の帯域推定技術で、画像の圧縮率を無線回線の変動に合わせて調整することで、違和感のない滑らかな映像を実現。

(4)電波伝搬シミュレーション技術

防災無線や業界向け無線分野に加えて、通信キャリアの伝搬シミュレーションにも対応してきた経緯から、精度の高い電波伝搬シミュレーションの実施が可能。さらに、ユーザーの環境にて電波伝搬測定、周囲との干渉調査など、システムを導入する際に必要な専門知識の伴う作業支援が行える。

2. ソフトウェア・アプリケーション

現場センシングソリューションのような画像認識やタブレット端末のアプリケーションなど、パナソニックのさまざまなソフトウェア・アプリケーションを提供し、現場の課題解決をサポートを実施。例えば、物流現場で荷分け作業の効率を上げたい場合に、カメラを通じて作業者の移動距離をセンシングしたり、仕分けする荷物側にプロジェクターで種別を投影するなど、現場に応じたさまざまなソリューションを提供している。

今後はローカル5Gを活かした多数のカメラセンシングや機器の遠隔操作など、さまざまな現場の課題解決に資するソフトウェア・アプリケーションの創出を行っていく。

3. エッジデバイス

同社は、数多くのエッジデバイスを自社開発しており、将来5Gとの接続機能を搭載していく予定のエッジデバイス(タブレット端末・ウェアラブルカメラなど)や、ゲートウェイ機器をつないで5Gにつながるエッジデバイス(セキュリティカメラなど)に加え、自社に限らずさまざまなエッジデバイス(AGV・業務用ロボットなど)も通じてデータを取得するなどのユーザーのニーズに対応していく。

4. サポート体制

同社は、全国約70拠点に総勢1,100人の運用、保守を行うフィールドサポート体制を擁している。また新サービスの立ち上げにあたり、提案力強化のためのネットワークコンサルタントの増強と、導入・運用におけるサポートメニューも充実させていく。

また、リモートサポートとして、ネットワークオペレーションセンターも2020年10月に開設し、24時間365日ユーザーのネットワークを遠隔で監視する体制を構築。そこでは、SIMカード発行/貸与から、システムアップデート、システム拡張/追加、ヘルプデスク等々の体制を整えている。

【現場マルチネットワークサービス料金について】

・機器費用
ネットワーク構成・基地局数等の詳細については個別見積にて
・サポート費用
(1)導入・構築サポート…個別見積
(2)運用サポート…月額12万円より

【本サービスの提供開始時期】
2021年4月1日
4月1日サービス開始時点の提供可能機器は、プライベートLTE(自営BWA)とWi-Fi。プライベートLTE(sXGP)は21年6月、ローカル5Gは22年4月に発売を予定。

【今後の展開】
■ローカル5Gラボ(仮称)
2021年1月13日にSAシステムの実験試験局免許を取得済みで、2021年春頃よりローカル5Gを体感できるフィールドとして公開予定。

■「現場マルチネットワークサービス」のウェブサイト

出典:パナソニック「新事業『現場マルチネットワークサービス』の提供を開始」