「スモールスタート」という言葉がある。その字面の通り「小さく始める」という意味で、新たな事業やプロジェクトを立ち上げる際は、機能やサービスを限定してはじめ、後に需要に合わせて規模を拡大していくことである。始めるまでのハードルが低く、方向性を変えやすく、撤退という最悪の場合でもリスクが少なくて済む。主にIT分野や起業する際などによく使われる
▼2016年は、「IoTを実行する年」と言われる。昨年はIoTという言葉が盛り上がり、さまざまな情報が飛び交った。これを受けて、今年はそれらを実行する年にしていかなければならないという風潮にある。しかし動きは鈍いままだ。あるIoTプラットフォームベンダーはこんな状況を「日本人はIoTに対して非常に関心が高く、よく勉強している。情報収集という面では世界でも一番かもしれない。でも、予算を付けて実行するフェーズになると、一気にスピード感が失われる」と指摘する。取り組む意欲はあるが、いざ始めるとなると何から手を付けていいか分からなくなり、思考停止に陥ってしまう。IoT化が進まない日本企業は、ほとんどがこのパターンだそうだ
▼これからの製造業にとってIoT導入は必須である。しかし、現段階ではほんの小さなもので良い。何も工場全体をネットワークでつないだり、データを取ったり、すべてを見える化したりする必要はない。「まずやってみる」ことが大事なのだ。対象をある一つの装置に限定し、稼働データをクラウドに上げてデータを分析して予知保全をしてみる。それだけで十分だ。IoTのプロセスをいったん経験すれば、何が必要で、どういう手順を踏めばよいのかが分かる。IoTはスモールスタートが鉄則。「自分の経験はどんなに小さくても、百万の他人のした経験よりも価値のある財産である」(ゴットホルト・エフライム・レッシング)。IoTを経験することこそ、今の日本企業に必要なことである。
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